長春長生生物科技
吉林省の長春市に居をかまえる長生生物科技股份有限公司(統一社会信用番号:91320700138991134G)は深セン株式市場に上場する大手ワクチンメーカーです。その子会社の長春長生生物科技有限責任公司(統一社会信用番号:91220101124037315G)があります。
0120-70-4515
電話受付:平日 10:00〜17:00
(土・日・祝日休)
column
2018年08月29日
利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 河原吉虎
今回は、最近の中国では医薬にまつわる話題が多いのでご紹介します。
今年の夏、中国大陸で大ヒットしている映画がこの「わたしは薬の神ではない(直訳)」です。実話を題材にした映画で、中国でも抗がん剤は高額で、主人公の男性は薬が高価で買えない人々からお金を集め、インドで安価なジェネリック薬品を代理購入して、非正規に中国に持ち込むということを繰り返し、最終的には主人公は捕まってしまうのですが、映画の前半部分はユーモアに溢れ、後半部分はリアルに迫っていて、大変おもしろいとのこと。(実際に映画を見た弊社の若手女性社員の談)
この映画がヒットし、高額医薬品や貧困、格差の社会的問題に再度、社会的関心が集まり、それを受けて李克強首相が抗がん剤の値下げや供給確保などの関連措置を早期に実施するよう関係当局に指示したとニュースで伝えています。そして、実際にいくつかの輸入抗がん剤が値下げになるとニュースにもなっています。
また、この映画公開の前となる2018年5月に輸入抗がん剤に対する関税撤廃(ゼロ関税)をしています。(新華社通信より)
中国ではこの映画がヒットしようとしまいと、この高額医薬品の問題に取り組まなければならない理由があります。中国ではかつて日本がたどってきたような都市化そして少子高齢化が日本とは比べ物にならない規模で進行しています。高額な薬価あるいは高額医療が健康保険でも賄われますので、これが中国の各地方政府を悩ませています。
中国の国家がんセンターによる「2018年全国最新癌症報告」によると2017年1年間で380.4万例が確認され、うち、229.6万例が死亡したとのこと。今後も中国の人々の生活スタイルの変化とともに増加しているとされていますので、中国国家としても医療保険が破たんする前に手を打たなければなりません。
もう1点、中国で注目を集める医療にまつわるニュースと会社を紹介します。
吉林省の長春市に居をかまえる長生生物科技股份有限公司(統一社会信用番号:91320700138991134G)は深セン株式市場に上場する大手ワクチンメーカーです。その子会社の長春長生生物科技有限責任公司(統一社会信用番号:91220101124037315G)があります。
この長春長生生物科技有限責任公司に2018年7月15日、中国国家薬品監督管理局より、狂犬病ワクチンの製造工程において、重大な法律・規定に違反する行為が見つかったとして、同社にワクチンの製造停止の命令が下され、ワクチンの製造資格である医療GMP認定(医薬品適正製造基準)も取り消されました。
既にこの問題のワクチン65万本が流通しており、そのうちに36万本が既に接種済みということで被害規模も甚大です。また一部は海外にも出荷されており、その回収措置もされているということです。
この事件で、すでに同社の董事長含めた幹部15人が吉林省長春市の公安当局より刑事逮捕されています。
我々駐在員は中国に渡航の際に狂犬病のワクチンを接種しますが、まだまだ中国では狂犬病は都市部、地方部を問わず対処が必要な病気です。
また、一部ネットでは安全なワクチンを求めて日本や香港での接種方法が案内されるなどパニック的な動きもあります。写真は、とある会社の東京でのワクチン接種ツアーの告知です。
中国の富裕層はお金に糸目をつけませんので、大事な子供のため、孫のため需要はあると思います。実際に信頼できる医療機関でワクチン接種できるかは大いに不安ではあります。 中国では信頼の高い日本で医療検査を受けることに人気が高まっていますし、社員の福利厚生の一環として従業員ががんと診断された場合に日本でがん治療を受けられるというような団体保険商品も提供されています。
この社会的問題に対して、中国のネット企業も迅速に対応しています。
中国ネット大手のアリババは医療、健康を管理するアプリ阿里健康に不正ワクチンの診断機能を追加しています。
また、同じくネット大手のテンセントも微信(WeChat)のミニプログラムからワクチン検索サービスを提供しています。
企業情報を提供する企査査(https://www.qichacha.com/もワクチン検査の機能「疫苗查查(http://ai.qichacha.com/)」を提供しています。
中国のワクチン業界は2016年にも消費期限切れの薬を横流しして全国に大規模に販売するといった不正行為が発見されており対処していますので、こうした経験を経てワクチンの製造元や利用範囲のトレースはしやすくなっているのかもしれません。
日本でも昭和あるいは平成の初期の時代もこういった不正製剤や不正ワクチンの問題は起こっています。不正医薬品の問題、高額医療あるいは少子高齢化の問題も日本が辿ってきた道でもあり、これからさらに辿る道でもあるので中国のダイナミックな対応というのは見るべきものがあります。また日本の医療に対する中国人からの信頼は厚いものがあり、日本および日本企業にとっても大いにビジネスチャンスがあると感じています。