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会社が受講を命ずる『研修』あれこれ

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2019年04月17日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

桜の花びらが舞い、入学式帰りの親子の姿や新入社員が団体で行動する様子を見ると、「春だなぁ。」とつくづく感じます。今年も3月末日退職者の離職票と、4月の資格取得手続きで超多忙でした。行政も窓口に一番人が集中する4月1日を迎えるに当たっては、相応の準備をしていたようでしたので、昨年のような混乱はなかったように見受けられます。
さて、人手不足の昨今、せっかく入社してくれた新入社員をしっかりと育て上げ、戦力とし、会社に定着してもらうには「研修」が重要です。今回は「研修」に関する事例を紹介します。

研修会は強制できる?

一般的に研修には、OJTとOff-JTがあります。前者は業務遂行に付随した研修ですので、これに参加しないケースとは欠勤等の不就労があったことが想定できます。対して後者に関しては、研修会への参加を強制できるか否かがひとつのポイントになります。Off-JTに強制参加させるためには業務命令でなければなりません。労働契約により会社が得る労働力(能力や質)を高めることに繋がるかが重要です。
また、研修の内容等が次のいずれかに該当する場合は業務命令にはならないと判断します。
1)研修の内容が、当該社員の業務と無関係である。
2)研修の態様・方法・期間が適当でない。(肉体的、精神的に過度な苦痛を伴う研修等がこれに当たります。)
Off-JTへの社員の参加を強制するには、業務命令と言えるケースに限ります。

研修会に参加しなかった社員への対応

業務命令である研修を受講しなかった社員に対しては、改めて受講が可能な研修会であれば、もちろんそれに参加していただきます。ただし、それがかなわない場合は業務命令違反に対する懲戒処分を下すことになると思います。懲戒処分とするにどのように対応したら良いでしょうか?以下のような注意が必要です。
まず、懲戒事由の中に「受講が義務である研修会を受講しなかった場合。」と就業規則に規定することが必要です。この場合であっても受講しなかったことについて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合には、懲戒処分を下すことはできません。
なお、懲戒処分を検討するに当たっては、次の点に注意する必要があります。
1)研修会の受講が労働契約の範囲内の命令であるか?
2)社員が受講しなかったことに対するやむを得ない事由がないか?
3)研修会を受講しなかった業務命令違反はどの程度重大なものか?
さらに、懲戒処分についてはどの程度が適当かに関してですが、前述のとおり再受講が可能なものであれば再受講を促します。再受講の機会がない場合においては譴責(けん責)等の軽度な処分にとどめておくべきでしょう。

研修受講の際の労働時間は?

先日、弊所お客様より、「外部研修に受講させるのだが、研修会の時間は会社の定める所定労働時間と異なる。労働時間はどのようにカウントしたら良いか?」との質問を受けました。考え方としては2つあると思います。
ひとつは、就業規則に定める事業場外みなしを適用し、労使協定で定める時間労働したものとみなす(一般的には所定労働時間勤務したものとみなすことが多い。)。ふたつ目は研修会を受講した時間について勤務したものとみなすことが考えられます。後者を適用するには、①研修時間が所定労働時間以上である、②フレックスタイム制を適用している場合が良いでしょう。
研修時間が所定労働時間に満たない場合に、当該足りない時間分の賃金を控除すると、会社の命令により研修会に参加し賃金控除されてしまっては労働者にとって不利益です。また、会社に戻って当該不足時間分労働するなどもナンセンスです。
本件会社ではフレックスタイム制を適用していました。よって研修会の開始から終了時刻まで(昼休憩を除く)の時間を労働時間としました。さらに、午前と午後に研修講師が任意で取得させた休憩時間があったようですが、短時間であったため労働時間に含める対応をしました。
今回のように研修会のタイムスケジュールが明確である場合は、当該研修に要した時間を労働時間とすべきです。

研修会に関係する全ての時間が労働時間か?

先の事例は所定労働時間から大きく外れた研修会ではありませんでした。しかし、研修会によっては所定労働時間外や休日に実施されるもの、場合によっては深夜時間帯にまでかかるもの、研修会終了後に懇親会がセットされているものなど、多種多様なものがあります。これらに参加した全ての時間が労働時間なのでしょうか?具体的には次の通りです。
研修会は一般的にはタイムスケジュールが定められております。当該研修会が業務命令に当たり、それに参加する場合は受講した時間については労働時間とすべきです。また、深夜や休日の場合は割増賃金の支払いを要します。
しかし懇親会となると別の話です。参加が義務づけられているものであったとしても、懇親会は参加者たちの懇親(親睦)を深めることを目的としたものであり、飲食を伴う場合が多いと思います。アルコールが用意されているものなどはもちろん労働時間とカウントする必要はないと考えます。
参加を義務づけられているものであっても、業務との関連性が薄いものについては、労働時間としなくとも良いと考えます。

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